いろいろあった今年の垢を落とすべく、平成9年12月27日、朝、関西国際空港からロイヤルブルネイ航空で、妻と二人で、優雅な休日を過ごすためバリ島へ飛び立った。
日本から5時間でブルネイの空港に着き、1時間ほど待機して、2時間でバリ島のデンバサール空港に着いた。
バリの3大リゾートの一つであるクタのシーフードパレスレストランで中華料理を食べ、滞在地であるヌサドアのホテル「Putri Bali」へ向かった。
「プトゥリ」とはインドネシア語で「王女」の意味である。インド洋に面して建つ白い4階建ての本館と、赤レンガ屋根のコテージ群とのコンビネーションが美しかった。
翌28日、ホテルのレストランでバイキングの朝食を取り、バリ観光すべく、バリ州の州都であるデンバサールへ行った。
デンは「北」、バサールは「市場」である。
現地旅行会社はバリトラベルで、ガイドはアグスさん、グループは4組8人であった。
まず最初にバロンダンスを見に行った。インドネシアのほとんどの人々はイスラム教だが、ここバリだけは例外的にヒンズー教である。バロンの踊りは、“ガメラン”というバリ独特の楽器を使用する踊りだ。
バリでは良い魂と悪い魂がいつも同時に存在していると信じられている。バロンは良い魂をあらわす動物で、ランダは悪い魂をあらわす動物である。バロンとランダがこの踊りのなかでいかに戦うかを表し、どちらの勝利もないままに終わる。滑稽なユーモアを含んだ踊りだった。
市内の中心部ププタン広場に面して建つ豪華なバリ博物館。其の隣のヒンズー教の寺院であるジャガトナタ寺院。それから市場へ行ったが、このデンバサール市場の臭いは横綱級の強烈さだった。
ここの市場は建物の中にあり、暗くじめっとしており、サマルカンドの開放感あふれるバザールとは比較にならなかった。その上の強烈な臭い、そうそうに退散する。
ソーカレストランにて昼食、インドネシア料理をご馳走になった。きれいな庭の石畳で妻と二人はしばし昼寝。
昼からはバリ中部の金銀細工の村チュルクへ行き、妻は娘と自分の為のネックレスを買っていた。「芸術の村」ウブドでは、バリ絵画が有名で、私は50$の風景画を値切って20$で買った。マスでは木彫りの小物を買い、バティックいわゆるジャワ更科の工場を見学してヌサドアのホテルに戻った。
夜はオプショナルツアーで「ケチャックダンスとロブスターデナー」を選んだ。ケチャックダンスは娘のお勧め品だ。
別名モンキーダンスと呼ばれるケチャックダンスは、100人あまりの半裸の男たちが、「ケチャック・ケチャック」と叫びながら恍惚状態になり、その円陣の中で、ラーマヤーナ物語の踊りがあった。松明の火に浮かび上がるケチャックダンスは迫力あった。
夕食にロブスターを食べて帰った。今日はかなりの強行軍でホテルに帰って、シャワーを浴びてすぐに寝た。
29日は待望のボロブドウールの観光だ。早朝4時半のモーニングコールで起き、レストランで二人だけの朝食を摂り、ホテルを5時に出て、デンバサル空港に行く。イギリス系のMandala Airlinesに乗って、1時間でジャワ島のジョグジャカルタ空港に着く。
空港にはガイドのアリさんが迎えにきてくれていた。我々夫婦二人だけの、ガイドと運転手付きの豪華なツアーだ。
まず世界最大最古の仏教遺跡であるボロブドールに向かう。ジャワ文化の中心地として栄えたジョグジャカルタから車で約40分、きれいに整備された大規模な緑地公園の中にボロブドールは忽然と存在していた。
それだけがそこに聳え立っているという感じ。丘そのものが何層にも積み上げられたピラミッド。9層の回廊の側面の石にびっしりと描かれ彫刻されたブツダのレリーフ。その彫刻の見事さ、芸術的というより人間的な、なまなましい官能的でもある。圧倒された私は、全ての回廊を自分の足で歩いてみた。その存在を自分の体に溶けこまそうとしたが、あまりにも大きく偉大であったため、とても出来ないと諦めざるを得なかった。
ジョグジャカルタで中華料理を食べ、二三の観光地と影絵芝居を見て、プランバナンへ行った。
ポロブドールが目に焼き付いているため、さほど期待していなかったが、シワ寺院を始めとする寺院群、又その壁面に彫刻されたレリーフの素晴らしさ。
いくつかの寺院を歩き回り、見疲れて石段に腰を下ろして休憩した。ぼっとして至福の時を夕方まで過ごした。
このプロポドールとプランバナンを見ただけで今回の旅は、十分と感じるほど感動的だった。
30日、いよいよ今日は日本に帰る日だ。折角バリのプライベートビーチもあるリゾートホテルに泊まっているのだから、プールやインド洋のヌサドアの海で、のんびりと優雅な時を過ごすべく、予定を入れず、朝食後ホテルを探検した。
ヤシの木や赤や黄色の花があちこちに咲いており、プールヤテニスコートもあり、まさに南国のリゾートそのものの雰囲気だ。プールサイドの向こうのヤシの間に、真っ青なインド洋が見えるではないか。
部屋に戻り、水着に着替えて、まずプライベートビーチに行った。青い海と白い雲、浜辺のベンチ椅子。寝そべるヨーロッパ系の白人達。マリンスポーツを誘いにくるビーチボーイ。トップレスで堂々と肌をさらす白人女性。
日本とは違う何か別の世界に来ているようだ。泳いでいるのは二三の人だけだった。
海の水は塩からっく、仰向いて両手両足を広げれば簡単に浮かぶではないか。波に任せて空を見ていたら、頭の中が空っぽになった。
1時間ほど、ボートに乗ってヌサドアの沖の海でサンゴや色とりどりの熱帯魚を見た。波しぶきを上げて走るボートの揺れで妻と私は多少気分が悪くなった。
昼は部屋でカップラーメンを食べ、少し横になって疲れを癒し、近くのマーケットに買い物に行った。あまりの安さに妻はびっくり。小物やお土産を買いまくっていた。
昼から又プールに行き、タオルを借り、自分の椅子を確保して、泳いだり大きなピザを食べたりして、優雅なリゾートを満喫した。
夕暮れになって人影が減り、我々もホテルを去り、デンバサル空港から、バリに別れを告げ、大阪に向かった。
終わり
(記述日1998.1.2)
(掲載日2003.2.14)