東北に深田百名山が14座ある。唯一つ登っていない「会津駒ヶ岳」に行くことになった。
会津駒ヶ岳は尾瀬の東北ー燧ヶ岳の東北に位置する。福島県桧枝岐村にある。
桧枝岐は奥只見の秘境にあり、ぜひ訪れたい場所だった。
10月2日(木)、毎日新聞旅行にて「八溝山・茶臼岳・三本槍岳・会津駒ヶ岳・二岐山」ツアーに参加した。
目的は会津駒ヶ岳唯一つで、八溝山や二股山がどの様な山か知らなかった。会津駒ヶ岳の付近の山と思っていた。
又、茶臼岳・三本槍岳がいわゆる那須岳とも認識していなかった。那須岳(茶臼岳)は百名山で私は既に単独で登っていた。
三本槍岳は那須連峰の最高峰だ。
伊丹空港に午前7時20分集合とのことで、妻に文句を言われながら早起きしてもらって生駒駅に送ってもらった。かろうじてセーフ。
日本航空833便にて、福島空港に9時15分に着いた。
メンバーは男性4名女性6名の計10名だった。リーダーは毎日新聞旅行の内勤者で谷口課長。私は初めての付き合いだ。
女性メンバーのSさんとは三度目だ。
バスで茨城県の八溝山に行く。ここは日本山岳会が決めた300名山の一つだ。又、茨城県の最高峰でもある。
今回のツアーは中級者クラスであったが、参加メンバーは最高の熟達者であった。
男性の76歳のNさんは百名山完登者でもあり、近畿の都道府県最高峰を既に登っており、今は300名山と全国の都道府県最高峰と一等三角点を目指しているつわものだ。毎日新聞旅行では有名な人物で、「天狗さん」とも「仙人」とも「奇人」とも「変人」とも言われている人物だ。
女性のIさんは2年前に百名山を達成したとのこと。私より年上の童顔のK婦人は今回の会津駒ヶ岳で百名山達成とのこと。
皆でお祝いをしなければ。宴会が楽しみだ。もう一人の女性Mさんは、10月末の私も参加予定の「苗場山」で達成との話。
男性陣も負けていない。MさんとOさんは共に今回の会津駒ヶ岳が97座目だ。Sさんは91座目とは知っていた。
10名の参加者で私は後ろから3人目。幾つ登ったか最後まで言えなかった。

八溝山は良い山だった。八溝川湧水群があり、到るところから水が湧き出ていた。
深田久弥は茅ヶ岳で亡くなったが、地元の案内者に乞われて書いた高村光太郎の詩の一節
山へ行き、何をしてくる、
山へ行き、みしみし歩き、
水飲んでくる。 (色紙絶筆)
八溝山の水は美味しかった。八溝山(標高1022m)頂上には展望台があった。そこでコンビニで買った幕の内の弁当を食べた。



バスで新那須へ行く。途中「殺生石」に寄る。

今年は天候不順で稲の出来が心配されていたが、道中の田んぼは黄金色だった。

新那須では旅館
「自在荘」に泊る。
ここの料理は最高だった。
正しく大名料理。山小屋の粗末な食事とはえらい違いだ。
10月3日(金)、今日は那須岳(茶臼岳)だ。しかし生憎の雨模様。那須ロープウエイで山頂駅に行く。
雨がぱらつき、上下カッパの重装備。30分程で茶臼岳(標高1915m)に登頂。風が強い。
頂上写真を撮って、300名山の三本槍岳に向かう。稜線は突風が吹いている。秒速20m/sぐらいだ。


女性が一人飛ばされそうになる。やっと峰の茶屋避難小屋に着く。そこでは風を避けた登山者が一杯待機していた。
稜線を三本槍岳に向かった女性が、ザックカバーを吹き飛ばされ小屋に戻ってきた。
リーダーの谷口さんは撤退を決めた。男性のみなら向かっていくだろうが、怖がる女性陣を見ては、やむを得ない決断だった。

下山するに従って青空が広がってきた。朝日岳等の紅葉が美しい。


今晩の宿がある桧枝岐に行くが、時間の余裕があったので、奥只見の「平ヶ岳登山口」を見に行く。

ここは燧ヶ岳の裏側にある。
昔はここから平ヶ岳に登っていたが、今は短縮コースだ。10月10日出発の私の平ヶ岳登山も多分短縮コースだろう。
ここ桧枝岐は、桧枝岐川に沿って部落がある。
今日の宿は旅館
「ひのえまた」だ。
温泉に浸かり、晩御飯だ。ここの料理も最高。「献立表」まであるとは驚きだった。
「裁ちソバ」や「はっとう」。そして山椒魚のから揚げ。女性の中で天然記念物を食べるなんてと口にしなかった人がいたみたいだが、昔は「はんざき」と言って皆食べていた。「はんざき」とは半分に裂いても生きながらえると言われるほど精の強い魚だったからか?。
10月4日(土)、今日は会津駒ヶ岳の登山日だ。今日は少々の雨でも槍が降っても、勿論風ぐらいでは登山を諦めない。
男性は「天狗さん」を除いて登るだろう。女性も今日が100名山達成のK夫人、99座目のIさん。
天気は最高に良かった。

6時45分に滝沢登山口にバスで送ってもらう。木の梯子を登って樹林帯に入る。かなりの急登だ。樹林の道はブナやミズナラ。オオシラビソ等の針葉樹が混ざり初めて道はゆるやかになった。








紅葉が美しい。湿原が素晴らしい。会津駒ヶ岳はうっすらと雪化粧。
湿原は明るい茶色の草モミジ。真っ赤なナナカマド。笹の上には真っ白な雪。
明るい感じの稜線歩き。皆は大満足。
9時45分に会津駒ヶ岳(標高2133m)の頂上に着いた。
百名山達成のK夫人を真ん中に記念の頂上写真。私はこれで100名山88座目だ。
展望はすこぶる良い。周りは山又山。燧ヶ岳や至仏山。青い空と真っ白な雲。







大津岐峠までの稜線縦走は、展望といい、落ち葉の絨毯を歩くごとく、気持ちの良い時間だった。大津岐峠で昼食。
1時間半程でバスに戻る。
私の足の調子は良い。スズメバチによって刺された膝も治ったみたいだ。体の調子も最高。
今なら百名山も早いうちに達成しそうだ。





旅館「ひのえまた」に戻って、温泉に浸かり汗を流す。
又、バスに乗って二岐温泉に向かう。
今夜の宿は旅館
「ふじや」だ。
ここの露天風呂は混浴だったが、スダレで仕切られていた。
今日はK夫人の百名山達成のお祝いだ。「ヤマブドウのワイン」。K夫人からはビールの差し入れ。
皆でお祝いの寄せ書き。今夜の宴会は大いに盛り上がった。

百名山達成者は、ある人は300名山を、ある人は都道府県最高峰を、ある人は一等三角点を目指している。
私は一体何を目指すのか。関西百名山を日帰り登山でぼちぼちと登っていこうか。それが終われば、京阪奈丘陵の自然や歴史の探検だ。
いや実は、深田久弥の晩年がそうであったように、中央アジアを中心に「シルクロード」を旅したい。
百名山達成に一番尽力してくれた妻と一緒に「月の砂漠をラクダに乗って」はるばると旅したい。
10月5日(日)、今日は300名山の二岐山登山だ。標高1544mの登山だったが、行きも帰りも急登の連続だった。300名山も馬鹿に出来ないと思った。






帰りは「りんご園」に寄って、味見りんごを食べた。

福島空港で喜多方ラーメンを食べ、日本航空836便で伊丹空港に午後8時20分着いた。
妻に電話して、生駒駅まで迎えに来てもらった。


終わり
(記述日:2003.10.6)
(掲載日:2003.10.6)