伊豆の踊り子ー天城山






先日,久しぶりに生駒総合病院で診察を受けたら,血糖値が219まで上がっていた。主治医の細井先生に『このままなら再入院かインシュリンだな』と叱られた。
このところ自分に甘く,節制が足りなかった反省する。東京に戻ってこの3日間,酒も飲まず,食事の量も半分にして,毎日早く帰って規則正しい生活をする。
効果てきめん,今朝測ったら3カ月ぶりの144だった。頑張らなくちゃ。

今日11月23日,全国的に曇りか雨の天気予想だった。また寒さも近付いて居り,山は冬支度に入りつつあるかも知れない。
伊豆の天城山に行くことにする。川端康成の『伊豆の踊り子』でその名を知られる天城山は,伊豆半島の中央部に位置する火山である。

朝4時半起床,雨は降っていない。5時半出発,6時17分東京発こだま401号で熱海へ行く。伊東線に乗り換えて,伊東駅下車。8時発の天城高原ゴルフ場行きのバスに乗る。
空模様のせいか,数組の中年登山家だけだった。バスは深田久弥の歩き始めた大室山の横を通り,山の中をどんどん高度を稼ぎ,久弥の1日目の宿である遠笠山をも通り越して,9時過に天城高原ゴルフ場のクラブハウスの前に停まった。何か場違いな感じがした。

  標高1050mの登山口から,9時10分樹林帯の中に入る。平坦な山道を10分程歩き,分岐で左の沢沿いの道を辿る。少し進むと苔むす岩と小さな流れと木々が織り成す,自然の庭園を思わせる地点があった。水場らしい。
林間の道を登って行くとやがて息をつく急坂の登りになった。一歩一歩ゆっくり歩く。休みなしに登り詰めて10時に万二郎岳に着く。
山頂は笹や樹林に覆われて展望がない。それまで着ていたゴアテックスの雨具を脱ぎ,山頂を後に,万三郎岳に向かって50mほど進んだ山頂直下の岩稜に行く。
風が強く,吹き出していた汗がすっと引いて行く。予想と違って頂上付近は晴れ渡っており,目の前に富士山が大きく姿を見せていた。その頂上はすでに真っ白だった。

富士山を見ながら南千住で買った小さなサケ弁当を食べる。山の上のご飯は本当に美味しい。ゆっくり何回も噛み締めながら食べる。
  10時半岩稜を後にひと下りして鞍部に出,そこから登り返して小突起に着く。そこからの山稜の道は馬酔木のトンネルだ。2m足らずの細いえぐれた山道だが,馬酔木の様相は,奈良公園の『ささやきの小道』に匹敵する。ただ違いは,あちらは 静かな二人の恋の語らいなのに,こちらは汗びっしょりの一人旅。
この緑のトンネルを抜け下り切った所が石楠立と呼ばれる鞍部である。ここから万三郎岳までアマギシャクナゲのすばらしい群落があった。山中のそれは,室生寺のそれとはまた違った趣がある。
ブナ・ヒメシャラ・リョウビの大木が目に付く自然林を通って,標高1406mの万三郎岳の山頂に着く。11時30分,約1時間かかったことになる。
深田久弥は八丁池の方に縦走したが,日帰り登山の私は下山すべく,地蔵堂に向かって北へ下る。山頂直下の急坂を約30分で十字路まで下る。山をトラバースして1時間半かかってゴルフ場に戻った。百名山16番目の山行きだった。

(1995.10.10 )


終わり






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