憧れの尾瀬ーひうちヶ岳
30数年前からの一度は行ってみたかった尾瀬。
東京へ単身赴任して来てからも行けなかった尾瀬。やっとチャンスが訪れた。
生まれて初めての姉と二人の山行き。兄弟三人の道場100丈岩の岩登り以来だ。当時、姉は「こまくさ山岳部」のクライマーだった。高校生だった僕。
9月27日,夜、池袋集合。当初義兄も一緒に行く予定だったが、都合で行けなくなり、姉と二人となった。
怪しげな雰囲気の漂う池袋.街角にたたずむ外国の女達。ベルリンの夜が髣髴と蘇る異国情緒の街ー池袋。
バスに乗り込んで、明日の英気を養うためもっぱら眠ろうとする。二回のトイレ休憩のため、ぐっすりとは熟睡出来なかった。
28日朝5時,御池に着く。6時のゲート開門まで待つ。6時35分に沼山峠休憩所に着く。
6時40分出発。霜柱立つ木道を滑らないようにゆっくりと歩く。標高1781mの沼山峠を越え、大江湿原を通って、7時40分に尾瀬沼に着く。神秘的な尾瀬沼。
左前方に長蔵小屋を見ながら、休むこともなく、尾瀬沼に沿って、ひうちヶ岳の登山口へ急ぐ。
7時55分、長英新道に取り掛かる。一時間程歩いて小休憩。尾瀬沼が美しい。
向こうに煙が立ち上ってる所は、三平下の尾瀬沼山荘か?。
ここまで殆ど休みなしで来たが、少しも疲れてない。姉の足取りも軽い。相棒として信頼出来る。
姉のペースを考えて先に歩いてもらう。
かなり急な登りだ。10時20分、標高2140mのミノブチ岳に着く。すぐそこに頂上らしきものが見える。11時5分、標高2346mのまな板岳に到達。ここが頂上と思ったら、向こうに最高峰の柴安岳が見えるではないか。
途中、食事などして、11時半頃ひうち岳の頂上に立つ。
標高2356m、ここより東にこれ以上高い山は無い。
360度の展望が素晴らしかった。尾瀬ガ原の向こうには至仏山、その後ろは谷川岳か?。
南には日光男体山、尖った山は白根山か、隣の特徴ある山は皇海山。
至仏山の南にこの前登った武尊山が確認出来た。
北側にうっすらと見える湖は、奥只見湖か。右の山は駒ゲ岳。
素晴らしい景色に、姉も僕もうっとり。
12時に見晴新道を下山する。3時間程かかって、下田代の桧枝岐小屋に着く。1000m足らずの標高差を一気に降ったことになる。二人の足の達者さを証明したことになるが、確かにしんどかった。
夕飯前に、尾瀬ケ原を少しぶらぶらする。
29日朝6時、朝食後出発。尾瀬ケ原のどまんなかを、一本の木道の上を、うすぼんやりと朝霧の漂う中を、至仏山に向かって歩いていく。
トリカブトやリンドウの紫の花は所々にあったが、全体に花の少ない季節だった。
冬の到来を予感するような、静かに準備しているような、原全体が茶色っぽい色彩だった。
燃え立つようなニッコウキスゲや、無垢なミズバショウが無かったけど、生まれて初めての尾瀬ケ原は、いうにいわれぬ感動を与えてくれた。
近くに見えていたひうちヶ岳が遠ざかり、逆に至仏山がすぐ側に近づいて来た。
8時過ぎに山ノ鼻に着く。手の届きそうなところに至仏山がある。登りたい。
姉に相談すれば、「一人で登ったら?」と言う。そういうわけにはいかない。今回はすっぱりと諦める。
そうときまれば尾瀬ケ原を去りがたく、又来た道を戻って、木道の上に座り込んで、別れを惜しむ。
尾瀬植物研究見本園を散策し、ベンチで昼寝して、川上川に沿って、鳩待峠に向かう。1時間20分の標準時間を約45分でこなす。
1時過ぎにマイクロバスに乗り、戸倉で温泉に浸かる。疲労回復、気持ちがいい。
帰り道の渋滞もひどくなく、新宿でご飯を食べて、単身赴任の宿舎・南千住に帰る。
NHKの大河ドラマ「秀吉」に間に合った。
永年の夢だった尾瀬、100名山のひうち岳。姉と二人の初めての山行き。
楽しく素晴らしい山だった。
(1996.10.8)
終わり
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