岩木山と八甲田山と奥入瀬(2001.9.28〜9.30)






新田次郎の小説で有名な「八甲田山」へは一度行きたいと思っていた。
冬山は無理なので秋の紅葉を楽しむべくサンケイ旅行会に申し込んだ。
9月28日早朝、何時ものように妻に生駒駅迄送ってもらって伊丹空港へ行った。
集合時間は朝の7時50分。誰も居ない。うろうろしていると男の人が「お宅サンケイ?」と問い掛けてきた。近くに居たリュック姿の女性一人もこちらを見て目で頷く。添乗員はいない。やっと見つけた添乗員は航空券を渡しながら「青森空港で会いましょう」との一言。「参加者は何人?」との質問に「7人」とだけ。説明が少ない。7人とはこの種の団体登山では最も少ない人数だ。やはり往復飛行機の10万円近くの費用では遠慮したくなるのも無理は無い。

JAS751便で10時過ぎに「青森空港」へ着いた。私にとって青森は生れて始めて訪れる土地だ。
空港から外に出れば空気がひんやりして気持ちいい。天気は良い。
バスで弘前から津軽岩木スカイラインに乗って、岩木8合目(標高1238m)まで行く。途中窓から見える景色は「りんご畑」だ。岩木山は津軽平野に聳える独立峰の為、「津軽富士」と言われているがなかなかそのようには見えない。岩木山に近づいてやっとそれらしき姿に見えただけだ。

8合目は寒く、ロープウエイ駅の食堂で弁当を食べさせてもらった。お店の人に悪いので、天ぷらソバも取ったが、やはり温いソバに箸がいって弁当を半分残した。
今日の岩木山登山は8合目から登るので楽だ。標高差約400m足らず。私の足で1時間ちょっとか。添乗員のリーダー角崎さんに「頂上までの時間は?」と尋ねれば、「約2時間」と答えた。7人の内2人が女性なのでゆっくりペースを考えているのかと思った。

歩き出して分かったことは、このリーダーは少しも休憩を取らない。単独行中心だった私のペースと良く似ている。単独の場合はそれでいいが、団体のリーダーなのに後続が遅れても振り返りもしない。マイペースで先頭を歩くだけだ。結局御倉石を経て岩木山頂上(標高1625m)に休みなし50分で着いた。私はしんどく無かったが男二人が遅れた。
今日のメンバーは夫婦一組と男4人に女一人の7人だ。

頂上に近づくにつれて赤・黄と紅葉が美しい。しかし休みなしの為、ビデオを回す暇もない。先頭に遅れまいと付いていくだけだ。
頂上付近は寒く記念写真を撮って直ぐに降りた。(後日、足立さんから記念写真を自分の住所を明記せずに送ってきた。有難うございます。)帰りも一気に降りたので登りと同じく二人がかなり遅れた。女性(高畠さんという)は私にリーダーに注意してと言う。あのようにほっていかれたら困ると言う。「私が貴女より後ろを歩く」とだけ答えた。

バスで今日の宿「酸カ湯(すかゆ)温泉」へ向かう途中、岩木山神社へ寄った。岩木山頂上にあった宮はここの奥宮だ。神社にお参りし、無人販売所で3個100円の津軽りんごを買った。この旅で二つはおやつに丸かじりし、一つは妻への土産とした。
夕方、酸ヵ湯温泉に着いた。ここは十和田八幡平国立公園八甲田山で「八甲田山」の登山口だ。3人部屋で私は足立夫婦の旦那と無口な北中さんと同室にした。足立さんは私と同年で北中さんは一つ若い。この温泉は増築増築で大きくしたそうで、迷いそうだ。日本3大湯治場のひとつだ。混浴と聞いて直ぐに飛んで行った。温泉場は薄暗く男女の入口が別々で、湯場の真ん中で男女区分していた。数人の女性が浸かっていたが、湯煙でぼやっとしか分からない。まして老若は判断出来ない。男性陣は隅っこに浸かっているが、境界付近に進出しているのは大概女性だ。

食堂で8人揃って夕食とした。なかなか豪華な晩餐だ。ビールが美味しい。遅れた男性は加藤さんという山のベテランだ。サンケイ旅行会に顔が利くらしく、「ここだけの話だがーーー」と内情をばらしていた。口癖に「富士山には3回登った」と繰り返し、皆から煙たがられていた。
寝る前にもう一度混浴に浸かり、別の男子用の温泉で体を洗った。


9月29日、今日は八甲田山への登山だ。8合目までバスと聞いていたので安心していたが、最高峰の大岳から小岳と高田大岳を登り返して谷地温泉へ抜けるかなり難儀な縦走路だ。
朝早く朝食し出発。私達の部屋には出発時間も、朝食時にバスに残す荷物を出すことの指示も一切なかった。出発時間を角崎さんに聞いても「出来るだけ早く」という返事しか返ってこない。Kさんはかなり怒っていた。

団体行動の指揮官は皆の状況を把握し、各個人に何故その行動を取るのか納得させ、指示には絶対従わせなければならない。観光なら各人が好き勝手な行動でも、皆の不満を受けるだけだが、山登りは違う。遭難すれば一人のために団体全員が生死をさ迷うことにもなりかねない。小さな山行きでも必ずリーダーを決め、サブを付ける。リーダーが先頭を歩き、2〜3番目に隊で一番弱い人を配置し、ペースを一番弱い人に合わせ、最後をサブが締めくくる。
これが団体として登山を落伍者を出さずして成功させる基本だ。

 新田次郎の「八甲田山死の彷徨」を再度読み返して、指揮官の重要性を再認識した。
酸ヵ湯温泉(標高900m)から仙人岳・クロサンショウオの住む「鏡池」を通って、八甲田山で一番高い大岳(標高1585m)に2時間程で着いた。出発時は天気が良かったが、歩く内にあられが降ってきたりして天気はくるくる変わった。

やっと着いた大岳の頂上でビデオを撮っていると、指示も無くリーダーは降り始めているではないか。あわてて後を追う。
小岳は説明も休憩も無く通り、高田大岳に行く鞍部に着いた。12時だし、朝の説明ではこの当たりで弁当と聞いていたが、角崎さんは頂上で昼食と予定変更していた。風の無い暖かい場所だったが、頂上に向かって急な道を這い上がった。

30分程で高田大岳(標高1552m)に着いたが、凄い強風が吹き荒れていた。皆ばらばらにになって、少し下った道の側で北中さんとおにぎりを食べた。おにぎりはカチカチになっており、おかずも無く美味しくなかった。
ここから降る「谷地温泉」は青い屋根が見えていた。見た感じでは近い感じがしたが、標高差800m近くもありかなりしんどい降りだった。至仏山の尾瀬ガ原への降りと匹敵する。

2時間近く昨日のペースと同じくリーダーは後ろを気にせず歩き続けた。皆付いて行ったが、あの加藤さんがかなり遅れている。「口ほども足が動けば」というのが皆の気持ちだが、もし事故でもあったら大変と本人を待って大休憩となった。
20分待っても降りてこない。やっとリーダーが探しに行くと戻りかけた時に本人の声がした。
それ以降の降りは加藤さんが先頭に一人でとっととっとと先行してしまった。リーダーは何故注意しないのか。本人は皆に迷惑をかけた事を反省していないのか。
急いで降りてバスの時間は良いのか?折角の山なのでゆっくりと展望も楽しみたい。
やっと谷地温泉に着いたら案の定迎えのバスは1時間後だそうだ。計画性が感じられない。
ここで生ビールを、焼き岩魚を肴に飲んだのは最高に美味しかった。待ち時間に只で温泉に浸からせてくれたのは嬉しかった。このリーダーは無愛想だが良いところもある。後に私と親しくなる。

バスで奥入瀬渓流温泉に向かった。宿に着き早速温泉に浸かり、岩木山・八甲田山登山の汗を流した。色々な種類の温泉があり、数回入った。今回は東北の温泉巡りの旅でもあった。
 夜の宴会は皆の気分もリラックスして本当に楽しかった。

翌日は奥入瀬渓谷の散策。私は最後尾で昨日まで撮れなかったビデオを取り捲った。
期待してなかった渓谷は素晴らしかった。奥日光も良かったが、それよりはるかに規模も大きく、水と岩と木々の緑の織り成すハーモニーが最高。一度妻にも見せてやりたいと思った。観光に徹した半日でそれなりに楽しかった。

三沢空港でうどんを食べて、伊丹空港へ。そして夕方には生駒の家に帰ってきた。生駒駅までは、娘の彼が迎えに来てくれた。

今回は温泉尽くしの100名山44・45座目だ。出来れば今年中に半分は登りたいものだ。


終わり

記述日(2001.10.3)
掲載日(2003.4.25)








「深田100名山」ページに戻る