日本第二の高峰・北岳









北岳・間ノ岳・農鳥岳は総称して白峰三山と呼ばれている。そして北岳は標高3192mで日本第二位である。
南アルプスにあるためか、槍や穂高ほど登られていない。アプローチが長く、又標高差も1700mと日本の山ではトップクラスだ。
前から憧れていたが、果たして私の実力で登れるのかどうか自信がなかった。
今シーズンになって、焼岳から標高差1000m級を斜里岳・雌阿寒岳・甲斐駒ヶ岳・仙丈ヶ岳と登り自信が出来た。取り分け羅臼岳の1400mの標高差を1日で登り降りしたのは大いに満足感をもたらした。



8月6日(火)午前8時10分京都竹田駅集合。妻に近鉄京都線「新田辺」まで送ってもらう。今回はサンケイ旅行会で三泊四日の上級コース「北岳・間ノ岳・農鳥岳」だ。
バスで名神・中央自動車道を甲府まで行く。メンバーは珍しく男性が多く14名、女性が7名だ。夫婦者はMさんだけだ。リーダーは日本山岳ガイド連盟認定の「山岳・歴史ガイド」前田昌三氏。添乗員は大野さん。


天気は快晴。中央自動車道で普段なら見逃す山々も、前田さんの指摘で確認できた。中央アルプスの空木岳・宝剣岳・木曾駒ヶ岳。南アルプスの荒川三山・塩見岳。今回挑戦する白峰三山の農鳥岳・間ノ岳・北岳。10日前に登った甲斐駒ヶ岳・仙丈ヶ岳。そして存在感ある八ヶ岳や浅間山までも見えるではないか。明日の登山を想い心がウキウキしてくるのが分かった。
甲府で降り、芦安村でタクシーに乗り換え、今晩の基地「広河原山荘」へ着く。ここは登山基地。赤や黄色のテントの群。テントの周りは若い男女。何時もは多い中高年も少なく、殆ど学生らしき若者だ。山で若者に会うのは心強く楽しい。夕闇迫るベンチで皆と山談義。



8月7日、4時起床。4時半朝食。5時18分出発。顔を洗い、トイレを済まし、体操もして準備万端。ここ広河原は標高約1500m。
リーダーの前田さんから2〜3番目をゆっくりと歩く。大樺沢に沿って、広葉樹林帯をゆっくりと登っていく。ペースは遅いくらいだ。30分経って標高差150m登ったところで第一回目の休憩。5分間程だ。
さらに1時間ゆっくり登る。なだらかな登山道を歩く。標高2000mの谷で二回目の休憩。68歳の最年長の男性が遅れる。添乗員の大野さんが付いている。トランシーバーでお互いに連絡し合う。


ダケカンバの低木帯を登り二股の分岐点に8時着く。標高2160m。3時間足らずで標高差660mだ。美味しい谷の水を飲む。
前田さんは花のプロらしく、珍しい花には紙に花の名を書いて後続者も分かるよう置いていく。行き届いた心配りだ。
北岳と白馬岳しかない薄紫のミヤマハナシノブ。ひっそりと咲く白いセンジュガンピ。シシウド・イワオトギリ・トモエシオガマ・クガイソウ。昔子供たちがホタルを追い、虫籠代わりに使ったというホタルブクロ。楚々とした「麗人」を思い起こさせるレイジンソウ。
目の前に薄茶色に輝く峰の頂上が見える。余りに近すぎて「あれが北岳」と言われても信じられなかった。まだ標高差で1000mは登らねばならない。


右俣沿いに沢を離れ樹林帯に入っていく。急斜面をジグザグに登る。1時間ほどで標高差300mを登る。一番きつい登りだ。私はリーダーのペースにしっかりと付いていく。苦しくない。足も大丈夫だ。左上部にかの有名なバットレスの岩が見える。
林を出て開けたお花畑で4回目の休憩。
「伊吹山」で発見されたイブキトラノオ。ムカゴトラノオ。マルバダケブキ・クルマユリ・タカネナデシコ・ハクサンフウロ等々花また花。


展望の良い稜線の下で5回目の休憩を取る。10時35分、やっと稜線に飛び出す。標高2765m。昼食の弁当を食べる。妻に携帯で電話する。
天気は快晴。最高の展望。 周りはお花畑。カーペット状のイブキジャコウソウ。花びら8枚の白いチョウノスケソウ。花びら5枚のミヤマチングルマ。産毛のあるチシマギキョウと産毛のないイワギキョウ。
 

                     11時50分、肩の小屋到着。トイレを無料で借りる。小屋番は親切な若者だったのでバッチを買う。ここは既に標高3000m。頂上はすぐそこだ。少し登ったところで8回目の休憩。南アルプスの特産種でここにしか咲いていない花に見えない「タカネマンテマ」を前田さんから教わる。


午後1時やっと頂上に着く。日本第二の高峰、標高3192m。休憩を入れてだが約8時間かかって標高差1700mを登る。私にとって初めての経験だ。体の調子は快調。雲ひとつない青い空。北アルプスから中央アルプス、南アルプスは勿論富士山から大菩薩まで全て見えるではないか。私の過去の山行きで最高の展望だ。


乗鞍・御岳・木曽駒・穂高・槍・白馬・蓼科・浅間・八ヶ岳等々。先日登った甲斐駒ヶ岳と仙丈ヶ岳は目の前だ。南アルプスの塩見・悪沢も存在感を示している。今シーズン中にこの塩見・悪沢も登りたい。
30分休憩して、やせた岩稜を南下する。2時47分に「北岳山荘」に着く。本日の宿だ。
5時半の食事まで小屋前のベンチでまたまた山談義。同じ竹田乗車組の「学園前4人娘?」・私と同年配のTさん。前田さん・大野さん。
缶ビールで乾杯。心地よい疲労感。登りきった満足感。至福の時とはこのようなことなのだろうか。親しくなったNさんはスケッチに出かけている。
夕食を食べて、明日の3時起床を考慮して午後7時に寝る。

















  (2002.8.12)        終わり 








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