丹沢表尾根縦走の想い出
1995,8,26 快晴 昨年10月東京単身赴任となり,大東京を色々散策したがそろそろ何か本格的なものをしたくなり,30年ぶりに山行きを思い立った。
山の本を探しているとき,偶然に深田久弥の「日本百名山」を見つけた。味わいのある文章だった。
100の内4つしか登っていなかった。槍ヶ岳,穂高岳、白馬岳,伊吹山。
53才になってどこまで登れるか分からないが,前向きに挑戦しょうと思った。
長距離,長時間を歩く自信がなかったので,まず最初に霧ヶ峰に行った。
お茶の水のニッピンにて,山靴の本場イタリアの「ツーリスト」を買った。
八島ケ原湿原,旧御射山遺跡を歩き回った靴の履きごこちは大変良かった。
次に多少標高差のある登山として,ロープウエイで一気に登る天神尾根からの谷川岳を選んだ。
トマの耳までの2時間は,30年ぶりの急登の汗だった。最後のガレ場で少し足がつったが,たいしたこともなく頂上にて360度の大パノラマを満喫した。「ツーリスト」は登り下りの微妙な変化に十分応えてくれた。
この2回の山行きにて,今いかに中高年の登山がブームか良く実感できた。 日帰りではあるが本格的な登山として,丹沢表尾根縦走を狙って見ようと思った。
ニツピンで17lミレーのデァバッグとゴアテックスの雨具を買った。
1995,8,26 快晴 朝5時起床。6時南千住を登山姿にて出発。少々気恥ずかしい。秋葉原での連絡悪く7時前に新宿到着。7:01の箱根湯元行きの急行に飛び乗る。ぎりぎりのセーフ,危ない危ないーーーーー。 8:05に秦野着。駅前にて弁当を買い,8:15発のバスに並ぶ。50人ぐらいの最後の一人として乗る。
8:55にヤビツ峠着。立ったままの40分,グングン高度を上げ,気持ちが高ぶる。
バッグの整理と靴紐を締めなおして9:00に歩きだす。20人程が塔ノ岳へ既に向かった。他の人は大山へのハイキングか。
ゆっくり丹沢林道を北西に向かって下がって行く。焦らない焦らない,9:20に富士見山荘で左に分岐する車道に入る。ゆるやかに登るとほどなく右に登る登山道がある。
ここが表尾根の登山口で,ここまでに5人追い抜いた。登山道に取り付いて少し登ると車道を横切る。ここからは急登の連続である。水も飲まず,休まずにゆっくりと息を整えながら一歩一歩と2−3m先の地面を見ながら登る。苦しいがしんどくはない。足元はしっかりしている。この間に先行グループ10人程を追い抜く。
私と同じ歩調のカメラを持った50才ぐらいの仲間を意識する。
二ノ塔の直下で降りて来た人に,堪らずに「後何分にてーーー」と尋ねる。「30秒で二ノ塔,20分にて三ノ塔」ほっとする。
急に元気が出る。10:15に二ノ塔着。朝いれて来たお茶をコップ一杯と桃一ケ食べる。水分の多い桃のおいしかったこと。
5分休んで歩きだす。疲れていない,快調だ。わずかに下って登り返していくと,広々とした三ノ塔に着いた。
10:40にて20分でここまで来た。ほぼ標準のコースタイムと同じだ。自信がつく。ここからの展望は雄大でこれから辿る表尾根の山々が連なって,振り返ると大山の姿が大きく見えた。
ここでは休まずに,ガレ場を100mほど下ってから登る返していくと,烏尾山に着いた。11:00であった。
見晴らしも良く15分の休憩を取る。弁当を半分食べる。お茶を飲み,烏尾山荘にてウーロン茶4本1200円で仕入れる。高いが止むを得ない。
「カメラの人」は先に出発する。明朗な尾根道を二三の小突起を越えて行く。鎖も取り付けられた岩場もあり,楽しみながら,行者ケ岳に11:40着。例の人と「しんどいですなー」と話しかける。
新大日へは赤土の急な尾根の登りだった。苦しい。足がこれまでのように前へ進まない。ピッチが遅くなる。12:30にやっと新大日ノ頭に着く。ベンチに座って,女性登山家と例の人が話し合っている。10分程話に加わる。女性はベテランらしい。例の人は丹沢へは2度目と言った。帰りは大倉尾根を下るとのこと。私もそのつもりと答える。
ここには右から,札掛からの道が合流していた新大日茶屋の建物が建っていたが,何も飲まなかった。20分で木ノ又大日の突起に出た。例の人がもう一人の人と一緒にカキ氷をうまそうに食べていた。
イチゴの氷はおいしかった。元気モリモリ,ファイトが湧く。13:00に出発する。
ここまでくると目標の塔ノ岳まであと一頑張りだ。潅木等の生えた尾根道を辿るが,ここに来て,足が重い。最後の急坂では足が上がらない。休みながらゆっくりと歩く。13:25にやっと塔ノ岳山頂に着いた。
9時から歩き始めて約4時間半だ。久しぶりの登山−大満足だ。
山頂の展望を楽しみながら,残りの弁当を食べる。持って行ったにぬきを二つも食べた。尊仏小屋にてウーロン茶4本を又補充する。
山頂には鹿が2頭いた。
13:50に大倉尾根を下る。バカ尾根といわれる程長い尾根らしい。10分で金冷やしノ頭に着く。花立で先行していた「カメラの人」を「お先に」と追い抜き,単調な尾根を走るがごとく下った。
掘り山の家でお茶を飲み,15:00に駒止茶屋に着く。一本松跡を通過し,雑事場平から観音茶屋を過ぎて,大倉のバス停に16:10着く。かなり急いで降りたため,足が笑ってしまった。
バス停前の食堂で,例の人が降りてくるのを,生ビール2本と冷や奴,みそコンニャクにて待つ。
16:38にバスがきたので,少々名残惜しいがバスに乗る。16:59渋沢発。18:15新宿着。充実した一日だった。
終わり
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